『高丘親王航海記』と『いのちの海の声が聴こえる』の一年間

昨年の5月の初めから、今年の5月25日まで、ほぼ1年かけて二つの作品を発表いたしました。高丘親王航海記は私のダンスの理解者であり、また導き手でもあった澁澤龍彦氏にささげたものです。これまでのダンスの作り方と異なり、はっきりとした物語性に沿って作られたものなので、私のダンスを見てきた方々にとっては、違和感を覚えるようなところもあったと思います。京都と東京で上演されたこの作品は、正直申しまして、中学生が見ても理解し、喜んでもらえるような方向で作りました。タンスの専門家を対象としたものではなく、全くの素人やダンスを見たことのない人にとっても、喜んでもらえれば、という思いで作りました。その結果、澁澤龍彦氏の世界のイマジネーションの流れの中に、榎本了壱さんの舞台美術、舞台衣装等を通して、観客の方々を招き入れたかったという感じです。

今思い返しますと、どこかたんたんとした流れの中に、声無き澁澤龍彦氏を浮かび上がらせたかったのではないか、という気がいたします。東京公演が終わってすぐに、国立劇場のために『いのちの海の声が聴こえる』に取り掛かりました。これは、私が長らく考えておりました音楽世界とコトバの世界を、大群舞と群読、オイリュトミーとダンスを通して融合しようとする試みでした。これまで一度も行ったことのないものです。当初ははたして、そはんなことできるのか、自信のないままに始めた作品ですが、結果としては、あれでよかったのだろうと、今は感じています。私自身、仕上げの段階で、一度もこの作品を外側から見ることができず、出演者として作品の中に入り込んでおりました。マーラーと古事記などというのは、実に水と油のような気もいたしますけれども。舞台で踊っておりまして、私はそれなりに満足感を味わいました。ただ一つ残念なのは、終演時間が大幅に遅れてしまって何人かの方々が、冒頭しか見れなかったこと、心から申し訳ないと思っております。何か将来それを埋め合わせるような機会があればいいと思いますが、、、、。

二つの作品にわたって近藤良平さん、黒田育世さん、酒井はなさんを始め、岡本優さん、笠井瑞丈さん、上村なおかさん、浅見裕子さん。そして、多くのオイリュトミーストにご参加いただき作品を完成させることができました。この二つの作品は全く別の作品ですけれども、何が繋がってるなところがあるような気がいたします。あのオイリュトミーの大群舞が「海」に見えたというような印象を、Twitter で書いた方がいらっしゃいましたけれども、確かに、あの二つの作品は「海」で繋がっているのかもしれません。この1年間休みなく、振付三昧の日々でした。そしてそこで、一体、何が生じたのかは、まだ自分の中では明瞭につかめせんけども。しばらくの間、作品作りから、離れてみようと思います。夏には家族旅行でもできたらと思っています。いずれにしましても、多くの方々のご努力によって、この1年間を乗り切ることができました。また舞台から皆様とお会いしたいと思います。どうぞ、それまで、健やかにお過ごしくださいますよう。   笠井叡

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