外出自粛要請の日々

春爛漫。我が家の庭は今、オランダ鈴蘭、ラッパ水仙、すみれ、マーガレット、クリスマスローズが花盛り。数年前に挿し木したライラックが芽吹いてきたというのに。もうじき復活祭、ウサギたちが卵を探して草叢を忙しく駆け回る頃なのに。
今日はひっそりと静かな土曜日。外出自粛要請の日々……古いノートから。

若草色の箱ヒダスカート
クリーム色のカシミヤセーター(襟元の細いボーがお気に入り)
籐の丸い帽子(幼稚園の子どものような)

春爛漫の4月の陽光の下

郊外の
大学のキャンパスの
裏庭
ムンムンする草生きれ と
家畜の糞の 生暖かい臭い

草むらに 倒れて
秘密の遊び に耽る
おんなのこ

閉じた瞳の裏側は
はるか彼方の
胎児の夢

ニンフを追う
サテュロス

誰もいない
耳許で
豚の鳴き声

春爛漫の4月の陽光の下

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目に見えない戦争

4月になって、コロナウイルス感染拡大の勢いは増すばかり。天使館の活動も暫くの間ストップ。汗ばむほどの暖かな陽光を受けて、花のあとの桜の枝に柔らかな若緑の葉っぱが一斉に伸びてきた。鳥が楽しげに飛んでくる。誰も来ない静止した時間。うっとりするような甘美な一瞬、色が色でなくなり全てが反転したような……。
先日の「DUOの會」で、写真家の高橋恭司さんから写真集を頂いた。見開きのページに「写真はいつも世界の終わりを続ける」とあった。不思議な光の色。私の好きな色合い。輪郭が溶け合い、反対側から見ているような………。胎児の目に映った世の中の風景みたい………などなど、と勝手な想像が膨らんでいく。
高校生の時に読み始めて、何度も挫折を繰り返して、いまだに読み続けているトーマス・マンの「魔の山」。今や、ハンス・カストルプ青年と一緒に呼吸しているつもりに…。
目に見えない戦争の只中でも、やっぱり愉しく生きていたい。

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命の線引き

昨日は雪。今日は冷たい花曇り。ニュースで、志村けんさんがコロナで亡くなったのを知った。70歳! 私より6歳もお若いのに。
イタリアでは医療崩壊で、高齢の感染者には治療を施せないそうだ。もし私がコロナウイルスに感染したら………もともと、免疫抑制剤を常用し、その上、気道が狭く、呼吸が浅い、リウマチ持ちの私なので、これから先のある若い人々に治療ベッドを譲るのになんの躊躇いもないのだが、突然、外側から、いのちの線引きをされるとは思ってもみなかったこと。志村けんさんも、これからやりたいこと、やるべきことの計画を心の中にいっぱいお持ちだったことでしょうに。

あれこれ思い悩んでも致し方ない。心の中までコロナにやられないように。

心の中に
たくさん コトバの種を 植えよう。
美しい色 芳しい香り 透明な響き
壊れていくカラダを 恐れるな!

心の中のコトバたち 
光と熱になって
やがて 壊れたカラダは
青空の中に 溶けて流れていく。

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笠井叡「DUOの會」

新型コロナウイルス拡散防止のため、kAAT神奈川芸術劇場で幕開けした「笠井叡DUOの會」は、プレヴューと本公演2回の3回で終わってしまった。1963年の朝日講堂「犠儀」の公演以来何回公演を重ねて来ただろうか? 公演中止は初めてのこと。
でも、今も、目に見えない相手に多くの命がのみ込まれていく。カラダがあれば、何時でも踊れる‼︎

大野一雄先生に出会う2年前、18 歳になったアキラは……
……僕は僕なりに自分の価値を信じている。自己の偉大さが僕を見捨てないかぎり、僕は一人の淋しさを耐えることもできる。いよいよ18歳だ。勇気を出そう。僕は一人の時に密かに感ずる。未来の目標を心に浮かべて身震いする時が有る。それは未知に対する恐れでもあり、又、芸術の永遠性と一個の人間の小さな力を感じるからだ。僕は過ぎ去った過去を振り返った時、みじめな気持ちをいだいたりしてはならない。僕はそれを歓喜の気持ちでながめたいと思う。そして、自分が最後に一生を振り返った時、歓喜を持って、それを讃歌できるように………(アキラの手紙から)

そして、1962年大野先生の上星川の稽古場を尋ねたアキラは、翌年先生と1回目のDUO作品「犠儀」を創る。今から60年前のこと。

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目に見えない新型コロナウイルスの中で………。

ローマのマリアピアはどうしているだろう? フランスのエマニュルは? フライブルクのバーバラは? ニューヨークのヒメナとシゲは? シオヤサン、ミヤイサン………? みんなみんなどうしているだろう?
命の数が毎日毎日減っていく、地球上のあらゆるところで。
年老いた人も若い人も富んだ人も貧しい人も健康な人も病気の人もどこの国の人もどんな職業の人も、みんな同じ不安を呼吸して、剥き出しのいのちを生きている。
みんなどうしているかな?

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お祈りの言葉

空気が冷たい。洗濯干し場のコンクリの上のあちこちに、桜の花びら。今日の太陽はよそよそしい。
昼食。五目ずし。青梗菜、ワカメ、とうふのスープ。かぶ、ミニトマト、きうり、サニーレタスのサラダ、胡麻ドレッシング。いたってシンプルな食事。メルボルンの公演を終えて帰国した川口隆夫さんが、来週横浜のKAATでの公演「DUOの會」の稽古に訪れる。朝からニュースは新型コロナウイルスのことばかり。わたしの友たちはどうしているだろうか。
何か根拠を探ったり、解釈したり、説明したり、いいわけしたり……せず、永遠の一瞬一瞬を、静かに丁寧に受け止めて………そして、祈りの言葉を唱える。

 「われらを試みに合わせず 悪より救いいだしたまえ」
ではなくて
 「われらを試みに合わせてください そして 悪を認識する目をお守りください」と。

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笠井久子ブログ

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